愛犬の 尾を振っている 三寒日

朝早く 鳴くうぐいすに 覚まされて

花冷えの 花の重たき 桜咲く

乗り捨ての 自転車一台 芝青む

地獄絵や 生かされていて 初音きく

動かぬ手 すすり泣きする 春がすみ

不自由な 手を叱りおり 四温晴れ

六月や 雲のにほいや 津軽三味

片言で 子がらす鳴けり 西催ひ

十薬の 花に重ねて 母の顔

汝は知らず 奇麗に死にたし 夏の蝶

哀しみを かためて咲ける 四ひらかな

紫陽花に 死顔ひとつ 紛れおり

紫陽花を 活けて仏間は 静かなり

柴田篤子作品集  俳句(春)